在宅勤務の雇用契約で最も重要なのは、自宅などの勤務場所、担当業務、勤務時間、費用負担、出社への変更条件をあいまいにしないことです。2024年4月以降に締結・更新する労働契約では、就業場所と業務について「変更の範囲」も明示する必要があります。
在宅勤務だからといって、労働時間の管理や残業代のルールがなくなるわけではありません。契約書だけでなく、就業規則や在宅勤務規程、会社からの説明内容も確認しましょう。
在宅勤務の雇用契約で確認すべき項目
まず、次の項目を契約書や労働条件通知書で確認します。
| 確認項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 勤務場所 | 自宅、会社、サテライトオフィスなど、どこで働くのか |
| 勤務場所の変更範囲 | 将来、会社や取引先の施設などへ変更される可能性があるか |
| 業務内容 | 担当する仕事の具体的な内容 |
| 業務内容の変更範囲 | 配置転換や担当業務の変更がどこまで想定されるか |
| 勤務日・勤務時間 | 始業・終業時刻、休憩時間、休日、出社日 |
| 残業・休日労働 | 残業の申請方法、許可の要否、割増賃金の扱い |
| 費用負担 | 通信費、電気代、備品代、消耗品代を誰が負担するか |
| 機器・情報管理 | パソコンの貸与、私物端末の利用、データ管理、返却方法 |
| 勤務場所の安全 | 作業環境の確認、事故やけがが起きた場合の連絡方法 |
勤務場所と「変更の範囲」を確認する
在宅勤務では、「原則として自宅」「会社が指定する場所」「自宅その他会社が認めた場所」など、勤務場所の書き方を確認します。単に「在宅勤務あり」と書かれているだけでは、毎日在宅なのか、出社との併用なのか判断しにくい場合があります。
また、2024年4月1日以降に締結・更新される労働契約では、就業場所と業務について、契約期間中に変更される可能性がある範囲の明示が必要です。たとえば、在宅勤務から会社勤務へ変更される可能性、担当業務が変更される可能性があるかを確認しましょう。
ただし、「変更の範囲」が書かれているからといって、会社がいつでも無制限に勤務地や業務を変更できるという意味ではありません。実際の変更が有効かどうかは、契約内容、就業規則、変更の必要性や従業員への負担などを含めて判断されます。
在宅勤務の日数と出社の扱いを確認する
在宅勤務が毎日なのか、週に何日か、出社日が固定されているのかを確認します。契約書に具体的な日数がない場合は、在宅勤務規程や上司の指示によって決まるのかも確認が必要です。
- 在宅勤務を行う曜日や日数
- 定例会議などで出社が必要な日
- 会社から出社を命じられる条件
- 出社した場合の交通費の扱い
- 勤務地を自宅以外に変更できるか
「在宅勤務」と契約していても、出社が一切ないとは限りません。出社の可能性がある場合は、頻度、通知方法、交通費の支給条件を事前に確認しておくと、後の行き違いを防げます。
勤務時間と残業代のルールを確認する
在宅勤務でも、原則として会社は労働時間を把握し、法定労働時間を超える労働には一定の条件のもとで割増賃金を支払う必要があります。始業・終業時刻の報告方法、休憩の取り方、残業の申請方法を確認しましょう。
確認するポイントは次のとおりです。
- 勤怠システム、メール、チャットなど、勤務開始・終了の報告方法
- 休憩時間の長さと取得方法
- 残業前に上司の許可が必要か
- 許可されていない残業をした場合の申告方法
- 深夜や休日に働く場合の手続きと割増賃金
- 中抜け、私用外出、子どもの対応などの扱い
「残業は禁止」と定められていても、実際に会社が業務を指示し、労働時間に当たる仕事をさせていた場合まで、当然に賃金の対象外になるとは限りません。反対に、在宅勤務中の私的な時間まで労働時間になるわけではないため、記録方法を明確にしておくことが重要です。
みなし労働時間制は自動的に適用されない
在宅勤務だから、働いた時間をすべて一定時間とみなせるわけではありません。事業場外みなし労働時間制などを使うには、法律上の要件を満たす必要があります。
会社から「在宅勤務はみなし勤務」と説明された場合は、どの制度を使うのか、みなし時間は何時間か、深夜・休日労働の扱いはどうなるのかを確認しましょう。
通信費や電気代などの費用負担を確認する
在宅勤務では、インターネット通信費、電気代、机や椅子などの備品代、文房具などの費用が発生します。誰がどの費用を負担するのか、契約書、就業規則、在宅勤務規程などで確認します。
特に、次の点を具体的に確認してください。
- 会社がパソコン、モニター、スマートフォンなどを貸与するか
- 自宅のインターネット回線を使う場合の通信費
- 電気代を定額または実費で支給するか
- 備品を購入する前に会社の承認が必要か
- 退職や在宅勤務終了時に機器を返却する方法
- 費用を給与から控除する場合の条件
「費用は自己負担」とだけ書かれている場合、どの費用まで含むのか分からないことがあります。自己負担の範囲と、会社が支給・貸与するものを一覧で確認すると判断しやすくなります。
会社の機器と個人情報の管理方法を確認する
会社のパソコンや資料を自宅で扱う場合は、情報漏えいを防ぐためのルールを確認します。私物のパソコンやスマートフォンを使う場合は、利用できる機器、セキュリティソフト、保存場所、家族との共用禁止などの条件を確認しましょう。
- 会社指定のパソコンやVPNを使う必要があるか
- 私物端末や個人のクラウドサービスを使えるか
- 紙の書類を自宅へ持ち帰れるか
- 家族が画面や書類を見ることを防ぐ方法
- 端末や書類を紛失したときの連絡先と期限
- 在宅勤務終了時や退職時のデータ削除・機器返却
自宅のWi-Fiや私物端末の利用を認めるかどうかは会社ごとに異なります。契約書に記載がなくても、社内規程や情報セキュリティ規程に定められていることがあるため、あわせて確認します。
自宅の作業環境と労災の扱いを確認する
在宅勤務中に仕事が原因でけがをした場合、状況によっては労災保険の対象となる可能性があります。一方、私的な行動中の事故まで仕事中の災害になるわけではありません。
事故が起きたときに、次の連絡方法を確認しておきます。
- けがや体調不良が起きた場合の連絡先
- 事故が起きた時刻と状況の記録方法
- 会社への報告期限
- 作業場所や勤務時間を確認できる記録
- 会社が用意する安全衛生上の説明やチェック項目
在宅勤務を始める前に、机や椅子、照明、通路などを確認し、長時間の作業に適した環境を整えます。ただし、自己判断で労災に該当すると決めつけず、事故が起きた場合はまず会社へ報告してください。
契約書と実際の働き方が違う場合の確認方法
契約書では「在宅勤務」となっているのに、頻繁な出社を求められるなど、実際の運用が違う場合は、会社に変更の根拠と条件を確認します。
- 労働契約書、労働条件通知書、在宅勤務規程、就業規則を確認する。
- 在宅勤務の日数、出社日、勤務時間、指示内容を記録する。
- 契約書の「就業場所の変更範囲」と、会社が示した変更理由を確認する。
- 不明点をメールなど記録に残る方法で会社へ質問する。
- 回答と実際の運用が一致しない場合は、地域の労働局や労働基準監督署などの相談窓口に相談する。
契約書に書かれていないから直ちに違法、または会社の指示が直ちに有効、と決まるわけではありません。契約内容だけでなく、就業規則、会社との合意、これまでの運用も含めて判断されます。
契約前に最低限確認するチェックリスト
契約書に署名する前に、次の質問への答えが分かっているか確認しましょう。
- 在宅勤務は毎日か、週何日か
- 出社を求められるのはどのような場合か
- 就業場所と業務内容の変更範囲はどこまでか
- 始業・終業時刻と休憩時間はどう記録するか
- 残業の申請方法と残業代の扱いはどうなっているか
- 通信費、電気代、備品代を誰が負担するか
- パソコンや周辺機器は貸与されるか
- 情報漏えい、機器の故障、事故が起きた場合に誰へ連絡するか
- 在宅勤務を終了して出社勤務へ変更する条件は何か
この中に答えがない項目がある場合は、口頭だけで済ませず、契約書、規程、メールなどで確認内容を残しておくと安心です。
在宅勤務の雇用契約では、勤務場所と変更範囲、労働時間、費用負担、機器・情報管理、出社への変更条件を確認することが重要です。特に「在宅勤務あり」だけで判断せず、在宅勤務の日数や出社の条件まで具体的に確認してから契約しましょう。







